♪♪4つの四重唱曲 OP.92♪♪

 4つの四重奏曲Op.92は、ブラームスが1884年夏、ミュルツツーシュラークに滞在していた1884年に作曲されました。しかし、第1曲目の”O Schöne  Nachtは、1877年に作曲された曲の改訂版です。

 ”O Schöne  Nacht”の作曲について1977年11月13日に音楽を通じて親しくしていたエリザベート・フォン・ヘルツォーゲンベルクに「楽譜上の悪趣味な冗談」と告げて ”O Schöne  Nacht”楽譜を送りました。

 このコメントを付け曲を送ったわけはエリザベートがブラームスの歌曲Op.71-4 ”Willst du daß ich geh"(作詞カール・レムケ)について潜在的にエロティックな内容が含まれていために1977年5月にブラームスに対して嘆き非難した経緯があったからです。その詩の内容の一部は次の通りです。

     「野原には風が吹いているよ 愛する人よ愛する人よ 君は望んでいるの、嵐で怖いのに

     この夜に僕が出ていくことを 君は望んでいるの 僕が行ってしまうことを?」

 「楽譜上の悪趣味な冗談」1つは、”O Schöne  Nacht”の冒頭にエリザベートの夫であるハインリッヒ・フォン・ヘルツォーゲンベルクが作曲した4声のための「4つのノットトゥルノ」第2曲の冒頭部分を借用したことです。

 

ブラームスの”O Schöne  Nacht”の冒頭

そして、"Der Knabe schleicht zu seiner Liebsten sacht"の譜面に以下の文を皮肉交じりに挿入しました。

 

 「止めろ、親愛なるヨハネス、何をするつもりだ!このようなことは『民謡調』でしか語ってはいけないはずだ、

 それを君はまた忘れてしまった!農夫なら『とどまろうか行こうか』と問うことも許されるが、君は残念ながら農夫ではない!

 金色の輝きに包まれた美しい頭を傷つけるな——さっさと簡単に、こう言いなさい:(”O Schöne  Nacht”反復の始まり)

 

 フォン・ヘルツォーゲンベルク夫妻はブラームスのこの皮肉には苦笑しながらも1877年12月16日の書簡で美しい音楽だと賞賛し、1878年1月19日の私的なコンサートで演奏されました。それ以降、1884年に他の3曲の作曲に並行して"Der Knabe schleicht zu seiner Liebsten sacht"以降の後半部を大幅に改訂し、ベルリンの出版社フリッツ・ジムロックに楽譜を送付し12月に出版され演奏会が行われました。

ブライトコップフの新ブラームス全集による楽譜には、付録として初版の”O Schöne  Nacht”がついています。